第56話 「歌とシチューと」

夕方5時過ぎ、かなり私は機嫌が良くて『デイ・ドリーム・ビリーバー』を口ずさみながら、シチューを煮ていた。
後ろに一歩下がった時、ヒヤッと背中に電気みたいなものが走り、かかとを下げるのをやめた。


ネコのあなたのシッポが私の右足のかかとの下にノンビリと横たわっていた。


「もう少しで、踏みつけるところだったよ」と、あなたに注意するよう話しかける。
あなたは「そんなコト、関係ないもん」と言いたげな何かに満足したような顔して座りこんでいる。

「ここは危ないから、あっち行ってよ」と、私があなたの背中を押すと「イヤだ〜!!」と、言いながら部屋の方へ歩いて行った。

「あー、ビックリしたー。シッポを踏むとこだった」と私は一人でドキドキしていた。
また私は、唄いながら鍋の中に気を取られていた。
シンクの方へ一歩足を動かしたら、今度はあなたの横っ腹にドンとぶつかった。


私はあなたを眺めて、しばらく考えてしまった。


シチューの火を消して、サラダは後で作る事にした。
私はリビングのコタツに座り布団をバンバンと叩き、あなたを呼んだ。
あなたが嬉しそうに走ってきてヒザの上に上がり眠り始めたので、私はズルズルと布団から出て、料理の続きを始めた。


あなたはコタツで寝ている。


私はあなたを起こさないよう、小さく唄いながらサラダを作り始めた。

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