『くまとやまねこ』


著者:湯本香樹実
絵 :酒井駒子
定価:1.365円
出版社:河出書房新社

悲しみのその先へ......そっと寄り添う一冊


 児童文芸新人賞を受賞した経歴を持つ湯本香樹実の文章に、「よるくま」や「ビロードのうさぎ」で知られる酒井駒子が挿絵をつけた、講談社出版文化賞を受賞した一冊。


 表紙をめくるといきなり小鳥の亡き骸の絵がタイトルと共にとびこんできます。絵本の柔らかな世界観とは大きくかけ離れたもの悲しさに一瞬ドキリ。最愛の友達であることりを亡くしてしまったくまのお話で、くまはことりの亡き骸をキレイな小箱に入れて持ち歩きます。「つらいだろうけど、わすれなくちゃ」という森の友人たちの言葉に傷つき、家に閉じこもるくま。そんなとき出合ったのが、バイオリンを片手に旅を続ける一匹のやまねこ。やまねこは小箱の中身を見て、くまにそっと語りかける......

 大切な誰かを失った人にそっと静かに寄り添う言葉。やまねこが何を語ったのかはこの素敵な挿絵と共に実際に読んでみてください。


 表紙にこそ出てきませんが、登場するやまねこの凛々しさ、そしてバイオリンを弾く姿の神々しさは一見の価値あり。そしてこのやまねこにも終盤、ちゃんとドラマがあるんです。


 挿絵だけのページがあったり、あえて文字だけのページがあったり、まるで短編映画を観ているような錯覚に陥る名作!悲しみの先にやってくるかすかな光......モノクロのなかに効果的に用いられているピンク色が胸に沁みる一冊です。


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(竹田)

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