第4話 沈丁花

隣の家からジンチョウゲの香りがし始めた。
今年も、ネコのあなたが1つ歳をとったと、思うのだ。

あなたの誕生日は分からない。

いつごろ産まれたのか全くヒントすら無いのだ。

だから、こんなジンチョウゲの香る頃、産まれたのでは?と、勝手に思ってみた。

甘い花の香りと一緒に産まれたなんて、ステキな気がしたのだ。

だが、また命の針が1つ進んだと思うと切なくなる。
あなたのやれる事が少しづつ減ってる気がするのだ。
感情表現はとても豊かなんだけど。

あと何回、こうしてジンチョウゲの香りを一緒に楽しめるだろう。

私はあなたを抱いてベランダに出た。

ジンチョウゲやその他の香りをお腹いっぱいに吸い込むあなた。
興味深そうに目を光らせている。
「いい香りがするの。分かる?」と、私に言っているようだ。

ジンチョウゲの香りが強く風に乗ってきた。

まるで、あなたが誕生してきた事全てを祝福してるようだ。

コメント

人より時間経過が早いですからね。 でもその分いっぱい愛情注げるんだと思います(^-^)
タマコロ | 03/17
花の香りに歩いている足が止まるなんてことがありますね。 懐かしいような、少し想いに浸る瞬間があります。 猫の一年は人間の倍以上の早さで過ぎて行くことを考えると、胸が痛くなります
じゅん | 03/16
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